オンラインの事件一覧!オンラインカジノで捕まった人たち
オンラインカジノは合法と違法のグレーゾーンを利用して運営されている。
そのため、オンラインカジノをめぐっては、それほど数が多くないにしても逮捕の事例がないわけではない。
オンラインカジノの違法性について考えるためには「オンラインカジノの海外運営は逮捕できないが、オンラインカジノの国内プレイヤーは逮捕できる」という基本をおさえておく必要がある。
日本の賭博法はおもに「国内の胴元を検挙すること」が目的である刑法であるため、海外に拠点を持つオンラインカジノの胴元を検挙することは法的に不可能という状況にある。
一方、賭博法は日本国内に住む日本人にはしっかりと適応できる刑法であるから、「日本国内で日本人がオンラインカジノを遊ぶことは違法」である。
となると、「オンラインカジノで遊ぶ人口が飛躍的に増えている昨今、逮捕者が続出しているか?」というと現実はそうではない。実際は、2016年と2022年に2回しか逮捕の事例は確認されていない。
この事情を理解するためには、「胴元を検挙する」が目的である賭博法の性格を考えるだけで充分である。
要するに「プレイヤー(違法賭博者)の逮捕」は「違法胴元の逮捕」のついでに行われる、ということである。つまり「海外胴元」が検挙できない以上、「日本人プレイヤー」も検挙しにくい、というのがオンラインカジノの逮捕者が少ない理由である。
この事情を踏まえたうえで、今回はオンラインカジノ利用者の実際の逮捕者である2016年と2023年の事件を見ていくことにしよう。
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単純賭博罪で3人が逮捕された2016年の事件
日本のオンラインカジノの歴史のなかで、最初に「プレイヤー」が逮捕されたのは2016年にまでさかのぼる。埼玉県の三人のオンラインカジノ利用者が逮捕された。
胴元が検挙できない状態で警察がどのように三人の賭博行為を特定したのかは、当時のニュースを読んでもはっきりとはわからない。ただそこでは自宅への「強制捜査」があった、ということだけが明らかである。
おそらくは、ipアドレスのアクセス履歴や銀行口座や税務署などの証拠をもとに強制捜査に踏み切ったのであろうが、これは、警視庁としては「見せしめ」として、オンラインカジノの逮捕の事例をひとつでも作らなければならない、という焦りがあったのだろうと想像される。
罪状は単純賭博罪で、逮捕されたうちの二人は略式起訴を認めて罰金を支払い、残りの一人は略式起訴を認めずに裁判に持ち込み、担当弁護士の尽力もあり不起訴処分を勝ち取った。
略式起訴を認めてしまった場合は「前科持ち」になるが、裁判で不起訴処分になった場合は、いうなれば「おとがめなし」であり前科はつかない。
2016年のオンラインカジノ逮捕者から見えてくるもの
オンラインカジノの歴史における最初の逮捕は、ひとまず「オンラインカジノの逮捕が見せしめにはならなかった」という事件として総括することができるだろう。
警視庁のオフィシャルサイトには[オンラインカジノを利用した賭博は犯罪です!]というページが設けられており、この2016年の逮捕を「実例」として記載しているが、ここで検挙したうちの一人が「不起訴処分」になったことを記載していないという点でフェアではない。
実際、2016年に起こったこの「見せしめ的逮捕」のあと、7年間ほどは、警察はオンラインカジノの日本人プレイヤーを違法賭博者として検挙することができていない。
ひとまず「見せしめ」は失敗に終わった、と考えていいだろう。
2023年の京都府警巡査の唐突な書類送検
2023年、オンラインカジノを利用している日本人プレイヤーの7年ぶりの検挙は、なんと警視庁の内部である京都府警の巡査が対象であったことでオンラインカジノ業界に衝撃を与えた。
まず、7年ぶりの検挙であったという事実と、それが警察だったという二つの事実のために、オンラインカジノの利用者のあいだでは「いよいよ来る時が来たのか」という危機感が一瞬だけ走った。
この京都の巡査に対する処理は、書類送検と懲戒免職という軽いものであり「巡査が依願退職した」ということ以外は、ニュースからは何も知ることができない。利用額も2万円程度だった。
その後、まるでこの事件などなかったかのようにオンラインカジノ利用者の逮捕者は続かず、「いよいよ一斉検挙がはじまるのか?」と危惧したオンラインカジノの利用者たちの不安は、ひとまず杞憂に終わった。
この事件に関しては「見せしめ」であったのかどうかも不明であり、やや不気味で唐突な検挙であった。
ふたつの検挙の7年間の空白から見えてくるもの
アクセス履歴や銀行口座の確認などをすれば、2016年に埼玉の三人に対して行ったように日本中に散らばる数多くのオンラインカジノのユーザーに対しても同様に「強制捜査」ができたはずだ。
だが、そういった不当な強制捜査は7年間行われることはなかった。
これは前述したように、まず「胴元」が検挙できないという事情がまず第一に横たわっていることが大きいだろう。
賭博者をいくら逮捕したところで胴元を叩かない限りは検挙の意味はほとんどない。それが賭博法というものの本質だ。
だが、2016年の逮捕以降、警察が強制捜査をしなくなったからといって「だから安全だ」ということにはならない。
むしろ、2016年の逮捕は、警察はいつだって「強制捜査が可能だ」という事例として受け取るべきだろう。
現在、オンラインカジノのプレイヤーは「絶対に逮捕されまい」と安心しきっているきらいがあるが、「いつでも逮捕できるが、逮捕をするメリットがない」くらいに認識を改める必要があるのではないだろうか。